弥次さん喜多さんは大磯宿の入り口で化粧坂にさしかかる。 
それより大磯にいたると、虎が石を見て今度は喜多八が一首詠む。

  この里の虎は薮にも剛の者 重しの石となりし貞節

化粧坂 化粧井戸


 弥次郎兵衝もとりあえず一首、

去りながら石になるとは無分別 ひとつ蓮の上にや乗られぬ

(大磯宿の延台寺に虎子石というものがある。曽我兄弟の弟の曽我十郎の愛人だった遊女の 虎御前が、十郎の死後に悲しんで石になったと言いつたえる。
喜多八の歌は〈野夫にも功の者)民間にも功労者がある、と言う句に語呂合わせして〈藪にも剛の者)といい、虎は薮に住むから、虎御前も恋人の曽我十郎のように剛の者だと名前からこじつけたもの。)

延台寺

(弥次郎兵衛の詠んだのは、そうは言っても、石になってしまっては重くなって、極楽で恋しい十郎と一つの蓮の花の上に乗れないから、いささか無分別ではないかとふざけた)

大磯は、保養地として知られ伊藤博文、吉田茂の邸宅、別荘があった。また新島襄、島崎藤村もこの地で没している。ここで吉田氏と夫人の秘話を紹介する。