六郷の渡しを越えて川崎に着き、名物の奈良茶飯でしられた万年屋で、腹ごしらえしょうと店にはいって腰をかける。

(奈良茶飯…奈良の興福寺や東大寺で、小豆や勝栗を加えて茶汁で炊いた飯がはじまりと言うが、川崎の万年屋はことに老舗で名高かった)

万年屋の女「おはようございやす」
弥次「二膳たのみますよ」

旧本陣跡は牛丼屋さん

喜多「コレ弥次さん見なせえ。今の女の尻は去年までは柳腰でいたっけが、もう臼になったぜ。 どうでも杵でこづかれるとみえる。」
 (臼、杵は男女の隠語。ほっそりした柳腰の処女が男を知った)

ニ人は万年屋を出ていくと道筋いっぱいに、大名行列がやってくる。
喜多「オヤオヤあの弓をかついでいる人の笠をみねえ。笠の台の高いこと、ひでえ頭と離れているぜ。」
弥次「そして、あの羽織の長さは、さながら暖簾から金玉がのぞいているってところだな」

(大名行列の仲間や奴の羽織は、ぶっさき羽織といって、丈が長くて背中が半分裂けていて腰の下までかかっている。そこで裸同然の下半身を、のれんの問から金玉と洒落た)


喜多「殿様はいい男だな。さぞ女中衆がこすりつくことだろう」
弥次「べらぼうめ。いろいろなことに世話を焼くねえ。あの方々だって、やたらにそんなことをしてたまるものか」
喜多「なぜって、アレあのお道具を見ねえ。アノとおりに立ちっぱなしでねえか。
 ハ、、、、、。サァお駕篭が通ったから行こう」

(お道具は行列の中で立てている槍のことで、弓や鉄砲はお道具とはいわない。そこで槍を男の一物にみたてたのである)