二人とも馬をおりて、たどり行くほどに、神奈川の台町(今は横浜市)にくる。
ここは街道の片側に茶店が軒をならべ、波打ち際から眺める景色がいたってよく、晴れれば海上はるかに安房、上総の国が眺められる。

神奈川台場跡、勝海舟の設計

茶屋の女が門に立って、
茶屋女「お休みなさいやァせ。あったかな冷や飯もございやァす。煮たての肴の冷めたのもございやァす。蕎麦の太いのをあがりゃアせ。うどんの大きなのもございゃアす。お休みなさいゃァせ」
などと、わざと反対にいう洒落た呼び声。

おもての娘「お休みなさいやァせ。奥が広うございやす」
喜多「奥が広いはずだ。安房上総まで続いている」


弥次「喜多八見さっし。この魚はちとござった目もとだ」
 と、塩炊きの鯵をひっくり返してみて弥次郎兵衝は、
 
 「・・・・ござったと見ゆる目もとのおさかなは さては娘が焼きくさったか・・・・・」
(ござった…魚や肉類が腐ったと言う意味と、恋心が芽生えるとの二つの意味がある。これを使い分けている。〈焼く)は嫉妬するの意味にかける)

喜多八はこれを聞いて、同じくこじつけて一首詠む。
  「・・・・・うまそうに見ゆる娘に油断すな きゃつが焼いたるあじの悪さに・・・・・」

  (味と鯵をかけた洒落.いい娘だからとて味がよいとはかぎらない)

横浜は、ランドマークタワーに象徴される国際都市、食の中華街など人々をひきつける魅惑がある。