大笑いしながら行くほどに、早くも掛ケ客(保土ヶ谷)の宿に着く。
旅雀をつかまえようと、道の両側の宿屋が、餌鳥(えとり)に出しておく客引きの留め女たちの顔は、さながらお面をかぶったように、真っ白に白粉を塗りたてて・・・・・・


旅人二、三人来る。


留め女「もし、お泊りかえ」と、ひっ捕らえて手をひっぱる。

旅人「コレ、手がもげらァ」

留め女「手はもげてもようございます。お泊りなさいませ」

旅人「馬鹿ァ言え。手がなくちゃアおまんまが食われねえ」

留め女「お飯のあがられねえほうが、お泊め申すにゃアなおいいつごうさ」

旅人「エ、いまいましい。放さぬか」


弥次郎兵衝と喜多八は、このようすを初めから面白がって見ていたが、興に乗って弥次郎兵衛またまたこじつけて一首詠む。

 「・・・・お泊まりはよい程が谷と留め女、戸塚前ては放さざりけり・・・・・」

  (程が谷は戸塚の手前の宿なので、とっ捕まえてを戸塚前てとこじつけた)

 と、笑って通り過ぎるうちに、品野坂(横浜市保土ヶ谷区)と言うところに着く。

ここは武蔵の国と相模の国の境なりと聞いて、

 「・・・・・玉くしげふたつにわかる国境、ところ変われば品野坂より・・・・・」

  (玉くしげは二つにかかる枕言葉、下の句は所変われば品かわるのもじり)
さて、弥次さん喜多さんの旅は、武蔵の国を離れて、いよいよ相模国に入ります。