蒲原宿で失敗をやらかした二人ですが、気をとり直して東海道を急ぐ。

この話のうちに由井の宿に着くと、両側から呼び立てる声。

茶屋女「おはいりなさいやぁせ。名物砂糖餅をあがりやぁせ。しょっぱいのもおざいやぁす。お休みなさいやぁせ。お休みなさいやぁせ」

弥次「エヽ、やかましい女どもだ」

 呼び立つる女の声はかみそりや さてこそここは髪由井の宿

 (女たちのかみそりのようば甲高く鋭い声と、髪結いに地名の由井をこじつける)

倉沢の望嶽亭

 それより由井川を打ち越し、倉沢と言う立場へ着く。
ここは鮑、栄螺が名物で、海女がすぐに海にはいり、とってきて売る。

ここでしばらく足を休めて、
 ここもとに売るはさざゐの壷焼や 見どころ多き倉沢の宿

 (さざゐ…栄螺。このあたりは、山が海に迫り、大岩が重なって怒涛が打ち寄せる磯が続く。鮑や栄螺と磯の景色が見所)

 
それより「薩った峠」を打ち越し、たどり行くほどに、にわかに大雨が振り出したので、半合羽をひっかり、笠を深く傾けて、名にしおう田子の浦、清見が関の風景も、雨に降り埋もれて見る方もなく、砂道に踏み込んだ足も重たげに、ようやく興津の駅にいたる。