弥次喜多の二人は雨に降られ、ようやく興津の宿にいたる。
ここであやしげな茶店に立ち寄り、
喜多「オイ ぱあさん。ソノきな粉をつけた団子を二三本くんなせえ」
弥次「さてさて、久しぶりでおめえの顔を見たハ。いつもお達者でめでたい。この子は、ちっさな時見たより大きくなった。」
婆「わしは子供はおざんない」
弥次「そんなら孫か」
婆「インネ、子がなけりゃ孫もおざんない」

弥次「ハテノ、おめえの孫でなけりゃア、たしかどこかの孫であった」
婆「インネ、馬子(まご)じゃアおざんない。隣の駕篭屋の子でおざるハ」

弥次「ハァそうか。コレその子、団子が二つあまった。ソレ食いな」
駕篭屋の子「うらァ  やァだ」
弥次「ナゼいやだ」
駕篭屋の子「ナニ  糠(ぬか)ァつけた団子はやァだ」
弥次「ナンノ糠をつけたものか。コリヤきな粉だ」
婆「インネ、わしらがとこじゃア、糠ァつけて売り申す」

   
追分道標と名物追分ようかんの店(清水市)
本文とまったく関係ありません

弥次「エ、、どうりでざらざらすると思った。ペッペッ。そんなら犬にやろう。コ、、、、、」
犬「わんわん」

 と、残らず犬にやってしまい、胸を悪くしてここを立ちいで、道をたどり行くに、なお雨はしきり降りつづく。
ほどなく江尻の宿(清水市)を打ち過ぎると、ここで雨が晴れたので、

 降りくらし富士の根ぶとをうちすぎて  江尻に雨の晴れあがりたり

 (富士山の据野を富士根という。また、根ぶとは人の腿に出来る腫れ物のこと、根ぶとが腫れあがると、雨の晴れあがるをかけ、江尻で尻まで腫れあがるとこじつけた)