弥次喜多の二人、ようやく宇津ノ谷峠を越えて一息つく。
岡部の宿の宿引きが待ちうけて、
宿引「お泊りでございますか」
弥次「イヤわっちらァ今日、川を越さにゃァならねえ」
宿引「大井川は留まりました」
 と、増水で川留めになったという。

 (大井川の場合、平常の水位を二尺五寸として、これに二尺以上加えた高さ、つまり水深が四尺五寸を越えると、川越しは危険として通行が禁止される。これが川留めで、時には何日も続いた。雨が止んで水位が平常まで低下すると禁止が解かれ、これを川が明けるといった)

松並木
岡部宿の松並木

喜多「南無三、川がつかえやしたか」

宿引「さようでございます。先へお出なさっても、お大名が五ツ頭、島田と藤抜にお泊まりでございますから、あなた方のお宿はござりませぬ。まず岡部へお泊りなさいませ」                 
 (五ツ頭‥大名行列が五組)

早くも岡部の宿に着いたので

豆腐なるおかべの宿につきてげり 足にできたる豆をつぶして

(おかべは豆腐の女房言葉、足にできた豆にかかる洒落))
二人は川留めの明くまで宿をとって旅の疲れを休めた。