二人は打ち興じながら、金谷の宿に着いた。
駕篭かき「戻り駕篭に乗って行きなされ」
喜多「コレ弥次さん、駕篭はどうだ」
弥次「イヤ気がない。手めえ乗るなら乗って行かっし」

喜多「そんなら日坂まで乗ろうか」
 と、駕篭の値段を決めて乗って行くと、折りふし雨が降り出したので、古ござを一枚駕篭の上にかぶせてかつぎ出して、早くも菊川の坂にかかると西国三十三観音の巡礼が二、三人、
巡礼「アイお駕篭の旦那、一文ください」

喜多「寄りつくな、寄りつくな」
巡礼「御道中御繁盛の旦那、この中へたった一文」
喜多「エ、寄りつくなと言うに、べらぽうめ」
と、力むはずみに、どうしたことか、駕篭の底がすっぽり抜けて、喜多八どったりと尻餅をついて、
喜多「アイタ、、、、」
巡礼「ハ、、、、、」

小夜の中山峠

駕篭かき「アレアレけがァさっしやりませぬか」
喜多「コレ手めえたちゃア、なぜこんな駕篭にのせた」
駕篭かき「許さっしやりませ。わざとしたんじゃござらない」
喜多「どこぞへ行って、いい駕篭を借りて来さっしやい」
駕篭かき「ここは坂の途中で、借りるとこがござらない。」
 
喜多「エ、なおいまいましい。おらァもおりて行こう」
 と、ここで駕篭をおりて、ここまでの賃銑を払い、駕篭を帰して山道をたどって行くが、雨がしきりに降り出したので、坂道を滑ってころび歩いて、ようやくに小夜の中山の立場に着いた。


ここは名も高い子育て飴が名物で、白い餅に水飴を包んで出す。
この二人は酒飲みで甘いものは苦手、やっと一つ二つ食っているうちに、雨がさらに強くなった。

 ここもとの名物ながら われわれは 降りだす雨のもちあましたり

(雨をもてあましたと、飴の餅が食えなくてあましたとの地口合わせになっている)