やがて吉田の宿にいたる。
旅人を招く 薄のほくちかと ここもよし田の宿のよねたち
 (吉田通れば二階から招く、しかも鹿の子の振り柚で、という俗謡で、ここの女郎は東海道の名物になっている。また、吉田は火打ち石の火をつける火口の産地。
この唄と、招く薄の穂と火口を語呂合わせ、また女郎が招くにもかけ、ここも良しと吉田にかけている。)
こうして、このあたりから早くも日も傾いて、夕暮れに近くなったので、いざや急ごうと、くたびれた足を早めて行く道すがら、
喜多「どうだ弥次さん、歩いてもらちがあかねえの」
弥次「大いにくたびれた」

喜多「なんと、タベの泊りは中ぐらいの宿であったが、今夜はこうしやしょう。赤板までわっちが先に行って、いい宿をとりやしょう。

おめえは、くたびれたなら、後からゆっくり来なせえ。宿から迎えの人を出させておきやしょう」
弥次「それはよかろう。しかし宿の善し悪しはどうでもいいから、いい女のありそうな宿にしやれ」
喜多「のみこみ山 のみこみ山」

喜多八は、ここから駆け抜けて先に行く。