こうして藤川の宿にいたる。
宿場のはずれの棒鼻の茶屋は、軒ごとに生魚をつるし、大平椀や鉢を店先に並び立てて、旅人の足を留めようとしている。

西の棒鼻跡

弥次郎が一首、
ゆで蛸のむらさき色は軒ごとに ぶらりと下がる藤川の宿

(むらさき色でぶらりと下るのは藤の花、それと軒下にぶらりと下る茹で蛸にかけている)


笑いながら行くほどに、小豆坂を越えて岡の江のゆうせん寺(所在不明の寺)を渡って、大平川にいたる。
岸に生う芹のあおみに小鴨まで、水にひたれる大平の川

(大平川の風景を詠んだと見せて、料理の膳に出る大平椀に盛った小鴨に芹の青みを添えた御馳走に見立てたのが趣向)
やがて岡崎宿に至る。