こうして、二人は宿はずれの松葉川を越えて矢矧の橋にいたる。

 欄干は弓のごとくに反り橋や これも矢矧の川に渡せば

(弓と反ると矢の縁語の組み合わせが趣向)

矢作橋

それから今村の立場に着く。
茶屋の婆「名物砂糖餅おめしなさりまアし。お休みなさりまアし、お休みなさりまし」

喜多「オイこの餅はいくらヅツだ」
餅屋の亭主「三文でおざります」

喜多「こいつは安い。こちらの鶉焼はいくらだの」
(鶉焼・・塩味の餡の大福餅を焼いた菓子という。鶉のように丸くふくれている)

亭主「それも三文」
喜多「イヤこれは三文では高いようだ。ナントご亭主、こうしなせえ。これを二文に負けてくんなせえ。その代わり、そちらの丸い餅は四文に買いやしょう」

亭主は、こいつはへんてこなことをいうと思ったが、どちらにしても損にはならないから、
亭主「ハイようおざります。お取りなさい」

 喜多八、煙草入れから銭二文取り出して、
喜多「四文あれば丸いのを買おうと思ったが、二文しかないから、この鶉焼にしやしょう」
 と、たった一文の銭儲けして得意になって、鶉焼を取って食いながら行く。

弥次「ハ、、、、、こいつは喜多八でかした。さすがの亭主も胆ばかりつぶしていやがった」

 わづかでも欲にはふける鶉焼 三文ばかりの知恵をふるいて

 (ふけるは鶉の鳴き声のこと。それを欲にふけるにかけた。また、三文にもならねえ、三文野郎などといって、ごくちっぽけなものを三文という)